職業訓練では、自宅から訓練施設までの交通費が通所手当という形で支給されます。
通所手当は厳しいルールにもとづき支給さるのですが、これは裏を返せば不正が多い(しやすい)ということですね。
今回は通所手当の不正受給と、わたしが実際に体験した抜き打ちチェックについてお話します。
そもそも不正受給とは?
不正受給とは、偽りまたは不正な手段によって、給付を受けようとすることをいいます。現実に支給を受けたかどうかは関係ありません。
交通費だけでなく、退職すると支給される失業手当(基本手当)についても、支給のスタート前にはハローワークでしっかり釘をさされます。
それだけ不正受給というものに関係者は目を光らせているのです。
通所手当の支給の流れ
申請から支給までの簡単な流れを見ていきましょう。
手順① 通所届で通学ルートを申請
訓練の初日に、通所届という用紙に通学経路を書いて申請します。
通所届には自宅から訓練施設までの距離や交通手段など、こと細かに記入します。
手順② 定期券のコピーを提出
翌日には、購入したことの証明として定期券のコピーを提出します。
(ICカードにチャージして使う場合は、月末に1ヶ月間の利用履歴の提出が求められます。)
手順③ 申請から約2週間で承認
通所届で申請した内容はハローワークで個別に審査され、もっとも経済的なルートが承認されます。
手順④ 承認された内容に基づいて支給
翌月の中旬に、1ヶ月分の手当が振り込まれます。
通所手当の不正受給とは?

では、通所手当の不正受給とはどういうことをいうのでしょうか?
簡単に言うと、ハローワークが認めた内容とは違うルート・交通手段を使って、交通費を浮かせることです。
例を2つ見てみましょう。
例① 交通手段が申請と異なる場合
花子さんはA駅~X駅まで定期券を買い、ハローワークからも同じルートで承認されています。
しかし花子さんはコピーを取った翌日に定期券を解約し、家族の車で訓練施設まで送迎してもらっていました。
例② 通学ルートが申請と異なる場合
太郎さんはB駅~X駅まで定期券を買い、ハローワークからも同じルートで承認されています。
しかし太郎さんは、訓練施設の近くに住んでいる友人宅に居候させてもらうことになり、定期券を解約して徒歩で通っていました。
これら2つのケースでは、花子さんにも太郎さんにも交通費(定期券代)が支給されます。しかし実際には定期券を解約し、申請より安い手段で通っていますよね。
このように承認された経路を利用せず、別の経路や、車、自転車、徒歩など別の手段を利用することで差益が生じた場合、それは不正受給とみなされます。
不正受給をすると、返還はもちろんですが不正に得た金額の2倍をプラスして納めなくてはなりません。その後も給付を受ける権利がなくなってしまいます。
抜き打ちチェックに注意!
ここまで通所手当のルールを説明してきました。細かく管理されてはいますが、現実には、上記のような不正受給はやろうと思えばできてしまいます。
それは、突然に…
訓練2ヶ月目のとある日のこと。
授業中に訓練校の職員3人がとつぜん教室に入ってきて、わたしたちの定期券を回収していきました。
定期券のコピーを提出するよう、本部から指示があったそうです。訓練校の職員は、こんなこと初めてだと言っていましたが、“どこかの訓練校で不正が発覚した”ため、全校対象の抜き打ちチェックがおこなわれたのです。
コピーの提出は訓練の最初だけと聞いていたので、教室内は騒然となりました。
やはり定期券を解約してしまい、提出できない人は数名いました。現金で切符を買ったから証明できないとか、色んな理由を本部とやり取りしていましたが、わたしの学校では処分された人はいませんでした。
実際には、定期券を解約しただけで不正受給だと証明することは容易でないようです。
まとめ
職業訓練の交通費だけでなく、ハローワークの失業給付の取り扱いに関しては、かなりシビアな印象です。
今回は、実際にあった抜き打ちチェックについてお話しましたが、不正受給がバレてしまうケースはこれだけではありません。
違う手段で通っているのが目撃されたり、事情を知っている他の訓練生から密告される可能性だってあります。
「交通費を浮かせてもうけよう」という考えは決しておすすめしません。きっかけは「ちょっとごまかそう」という出来心かもしれませんが、リスクも損失も大きく、「軽い気持ち」では済まされないのです。
コメント